ふと思い出し、衝動的に3枚のDVDを買い揃えました。 中古で安く手に入ったこともありますが、今の私には、それらがどうしても必要だったのです。
その3枚には、当時の場面や匂い、そして忘れられない記憶が刻まれています。
この映画を初めて知ったのは、バンコクの通勤電車「BTS」の中でした。
いつものようにオンヌット駅からサパンタクシン駅へ向かう、朝の混雑した車内。漂ってくるシャンプーの匂いと、タイ特有のシッカロールの匂い。 ふと目に入ったのは、車内をジャックしていた鮮やかなピンクのポスターでした。
黒文字の英語で書かれた『LAST LIFE IN THE UNIVERSE』。 その格好良さに、私はしばらく見とれていました。電車がトンロー駅に停まると、駅前のシネコンにも同じ巨大なピンクが掲示されていて、ようやくそれが映画であることを知ったのです。
バイト先でその話をすると、「日本の俳優(浅野忠信)が出るんだよ」と皆が教えてくれました。センスの良い日本人の知人は、同じ監督の『わすれな歌』についても語ってくれました。映画の記憶は、あの熱帯の朝の匂いと分かちがたく結びついています。
『夏至』という言葉を聞くと、映画の内容よりも先に、ある光景が必ず脳裏に浮かびます。
現地で暮らし始めて数ヶ月。体調を崩して20キロも痩せ、電気も水道もない過酷な生活に疲弊していた頃のことです。私は何かと理由をつけては国境を越え、インフラの整った町へと逃げ込んでいました。
ある酷暑の日、日課にしていた郵便局のPOボックスを確認しに行くと、日本にいる女性から大きな荷物が届いていました。
待ちきれず郵便局の前で箱を開けると、そこにはたくさんの日本の食べ物が入っていました。 異国での孤独や、ふさぎ込みがちな日々の中で、遠く離れた場所から届いたその優しさが心に染み渡りました。
私はその場で、久しぶりに嬉しい涙をこぼしました。 あの時、郵便局の前で見上げた、突き刺さるような太陽の眩しさは今でも忘れられません。
ある女性が教えてくれた『夏至』という映画。 その言葉がトリガーとなり、私の記憶は今でもあの日の郵便局へとリンクします。
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