あの頃の私が「ジムニー」を求めた理由

当時の記事を読み返すと、私の人生には驚くほど「ジムニー」が溢れていたことに気づかされる。 近所の幼馴染の家で触れた歴代のモデルたち。そして何より、アメリカから「スズキ・サムライ」を逆輸入した、あのセンス抜群の友人の衝撃。

映画『恋しくて』のワンシーンに憧れ、ロレイン(リー・トンプソン)やワッツ(メアリー・スチュアート・マスターソン)のいた時代背景に胸を熱くしていた私にとって、ジムニーは単なる移動手段ではなく、「いつか到達すべき場所」だったのかもしれない。

「燃費が悪い」「タイヤが高い」「AT車だとジムニー乗りに不評かも」……。
5年前の私は、そんな些細なことを本気で心配していた。

だが、今の私なら当時の自分にこう言える。「迷わず、ジムニーにして正解だった」と。

実際にオーナーになってみると、燃費や利便性を超えた価値があった。 デジタルルームミラーを付け、リアワイパーを自作で間欠化し、自分だけの一台に仕上げていく楽しさ。雪の日、視界を確保するために必死でワイパーを動かしながら、この車を選んだ自分の選択を誇らしく思った。

当時は「ハンターカブで通勤しようか」なんて考えていたけれど、今の私にはジムニーが不可欠だ。 母の入退院が重なり、大量の布団を積んで処理センターを7往復もしたあの日。ジムニーのリアシートを倒し、泥臭く作業車として使い倒したとき、この車は本当の意味で私の「相棒」になった気がする。

人生が少しずつ静かになっていく中で、ジムニーのハンドルを握る時間は数少ない「能動的な楽しみ」のひとつだ。

5年前の私は、「一生に一度は」という思いで清水の舞台から飛び降りる覚悟をしていた。 今の私は、4型・5型と進化し続けるジムニーを横目に、「私はこのまま、純正の外観でいくよ」と穏やかに笑っている。

人生は儚い。だからこそ、あの時、損得勘定を捨てて「本当に好きなもの」を選んでおいて、本当によかったと思う。

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